はじめに(基本編からのつながり)
前回の【基本編】では、「中小受託取引適正化法」とはどのような法律なのか、そしてなぜ今この法律が必要とされているのかについて、全体像を確認しました。
「下請法」から名称が変わった背景には、取引の形が多様化し、より幅広い立場の人を守る必要が出てきた、という時代の変化がありましたね。
今回の【中級編】では、そこから一歩踏み込んで、実務の現場で気をつけたいポイントに焦点を当てていきます。
実はこの法律、経営者や管理職だけでなく、若手・中堅社員の方でも“当事者”になり得る内容です。「自分には関係ない」と思わず、ぜひ一緒に確認していきましょう。
中級編で扱うテーマについて
中級編で大切にしたいのは、「条文を覚えること」ではありません。
それよりも、「仕事の現場で、どう考え、どう振る舞えばよいのか」という視点です。
特に今回は、
- やってはいけないこと
- 言ってはいけないこと
に注目します。
悪意がなくても、日常のやり取りの中で“つい”やってしまいがちな行動や発言が、後から問題になるケースは少なくありません。その背景を理解することが、中級編のゴールです。
発注側・受注側という立場を整理しよう
まずは、「発注側」と「受注側」という立場を整理しておきましょう。
- 発注側:仕事を依頼する側
- 受注側:仕事を引き受ける側
この構図はシンプルですが、実務では「今日は発注側、別の案件では受注側」という人も多いはずです。そのため、「自分はどちらでもない」と感じてしまいがちなのです。
しかし実際には、見積を依頼したり、スケジュール調整をしたり、作業内容を指示したりする時点で、多くの人がこの法律の影響を受ける立場になります。
肩書きではなく、行動で立場が決まる――ここが大切なポイントです。
やってはいけない代表的な行為
ここでは、実務で特に注意したい行為を見ていきましょう。
一方的な条件変更
最初に合意した内容を、後から一方的に変更することは大きなトラブルの元になります。
「急ぎだから」「社内事情で」といった理由があっても、相手の了承なく条件を変えるのは要注意です。
無償対応を当然とする要求
「これくらい、ついでにやってもらえますよね?」
この一言が、無償対応の強要と受け取られることがあります。作業には必ずコストがかかる、という意識を忘れないことが大切です。
後出し・曖昧な指示
要件をはっきりさせないまま作業を進めさせ、後から「やっぱり違う」と修正を求める。
これは受注側に大きな負担を与えます。
立場を利用した圧力
直接的でなくても、「今後の取引を考えると…」といった含みを持たせた表現は、相手に強いプレッシャーを与えることがあります。
言ってはいけない・注意したい言葉
行為だけでなく、言葉にも注意が必要です。
たとえば、
- 「前はやってくれたよね」
- 「他社は無償で対応してくれている」
- 「今回だけだから」
これらは悪気なく使われがちですが、相手を追い込む表現になりやすい言葉です。
「悪気がなかった」という理由は、残念ながら免罪符にはなりません。言葉の受け取られ方まで想像することが重要です。
受注側として知っておきたい視点
受注側にも、知っておいてほしいポイントがあります。
断りにくい心理とそのリスク
「断ったら関係が悪くなるかも」という不安から、無理な条件を受け入れてしまうケースは少なくありません。しかし、その積み重ねが後々大きなトラブルにつながることもあります。
曖昧な依頼を受ける危険性
内容や条件がはっきりしない依頼は、後から認識のズレを生みやすくなります。「確認する勇気」も大切なスキルです。
記録を残すことの重要性
口頭だけのやり取りではなく、メールやチャットで記録を残すことは、自分を守ることにもつながります。
実務で気を配るべきチェックポイント
日々の業務の中では、次のような点を意識してみてください。
- 見積・発注・納期はセットで考える
- 口頭指示は必ず後から文面で確認する
- 個人任せにせず、社内で共通認識を持つ
これらは特別なことではなく、「少し丁寧に仕事を進める」だけで実践できるものです。
まとめ(次回:上級編への導線)
中級編では、「中小受託取引適正化法」を実務の視点から見てきました。
一番のリスクは、「知らないこと」です。知っていれば避けられるトラブルは、確実に存在します。
次回の【上級編】では、
- 経営者・管理職の視点
- 社内教育や仕組みづくり
- 取引先との関係をより良くする考え方
といった内容を扱う予定です。
引き続き、あんずブログで一緒に学んでいきましょう。
